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クライアントの声

研修導入事例|人材は「化ける」。その前提に立てるかがすべて─現場起点で変革を起こした組織づくりのリアル

コクヨ株式会社
執行役員
ヒューマン&カルチャー本部長
越川 康成
https://www.kokuyo.com/


株式会社ポジティブ・キャリア
代表取締役 多胡 敦史


コクヨ株式会社は、1905年創業の日本を代表する文具・オフィス家具メーカーであり、長年にわたり「働く・学ぶ」を支える製品とサービスを提供してきた企業です。近年は文具の枠を超え、オフィス空間の設計や働き方の提案など、「体験そのもの」をデザインする事業へと領域を広げています。
そのリーディングカンパニーが、人的資本にどう向き合い、現場からどのような変革を起こしてきたのか。今回の取り組みを、越川氏と多胡の対談形式でお伝えします。


芝山工場での取り組みが今回の施策の前段にあたると伺っています。どのような取り組みだったのでしょうか?


越川氏:
芝山工場の取り組みは、今回の施策の原点になっていると思っています。当時を振り返ると、単なる現場改善というより、「組織の前提そのものを問い直す」プロジェクトでした。
まず顕在化していたのは人手不足です。コロナを境に採用環境が大きく変わり、それまで機能していた採用モデルが崩れてしまった。地元採用を中心に回していた体制では、人が集まらなくなってしまったんですね。
ただ、それ以上に大きかったのが「人を育てる構造がない」という問題でした。それまでは新卒を時間をかけて育てる前提で回っていたため、外部から入ってきた人材を即戦力化する仕組みがなかった。結果として、人が入っても定着せず、組織としての再現性も生まれない状態だったんです。


当時の組織状態や課題について、具体的に教えてください


越川氏:
現場で起きていたのは、ある種の「目的のすり替わり」でした。本来は改善し続けることが仕事のはずなのに、いつの間にか「安全に回すこと」自体がゴールになってしまっていた。
これは現場が悪いのではなく、構造的な問題です。営業は受注を増やす方向に動く。工場はその受注をなんとか処理する。結果として現場は常に余裕を失い、「考える余地」が奪われていく。
そうなると、人はどうしても思考を止めてしまうんですよね。「とりあえず回す」「目の前を乗り切る」という判断が積み重なり、本来向き合うべき課題に目が向かなくなる。そういう状態だったと思います。

 

多胡氏が関わることで、その課題はどのように変化しましたか?


越川氏:
一番大きかったのは、「課題を言語化できるようになったこと」だと思います。
それまでの現場は、問題があっても「なんとかします」「大丈夫です」で終わってしまっていた。これはある意味で善意なんですが、組織としては非常に危険な状態です。
多胡さんが入ったことで、「そもそも何が課題なのか」「それは本当に優先すべきことなのか」という議論が生まれるようになりました。
これは単に会話量が増えたという話ではなく、会話の“質”が変わったということです。
現場と管理層が、同じ前提で議論できるようになった。この変化は非常に大きかったですね。

 

今回も多胡氏に依頼された経緯を教えてください


越川氏:
前回の取り組みを通じて、「人が変わる瞬間」を何度も目の当たりにしました。だからこそ、今回も同じ方向性で進めたいと思ったんです。
ただ今回は、前回のように「この課題に対してこの施策を」という形ではありませんでした。むしろ、「そもそもどこに手を打つべきか」という設計段階から一緒に入ってもらっています。
社内でも育成機能は立ち上げていたのですが、リソースが足りず、設計もまだ粗い状態でした。そこで多胡さんには、半分インハウスのような立ち位置で入ってもらい、議論を重ねながら一緒に設計していきました。
その中で見えてきたのが、「管理職一歩手前の層」を変えることが最もインパクトが大きい、という仮説でした。


今回の施策を検討する中で、最も重視されていたことは何ですか?


越川氏:
やはり「人は変わる」という前提に立てるかどうか。ここに尽きると思っています。
人材開発の議論をしていると、どうしてもスキルや制度の話になりがちです。しかしその手前に、「そもそも人は変われる存在なのか」という前提があります。
ここを信じていないと、どんな施策も形骸化します。
今回もそこはブレずに、持ち続けていた軸ですね。

 

多胡さんに質問です。単発の施策との違いはどこにあると感じていますか?


多胡氏:
一番の違いは「時間の使い方」、もっと言えば「何のためにやるのか」だと思っています。
単発の研修は、どうしてもその場で完結します。「いい話を聞いた」で終わり、行動に移る前に熱が冷めてしまう。私はこれを本当にもったいないと思っていて。研修は学ぶためにやるのではなく、事業の成果を出すためにやるものだと考えているんです。
だから今回は、学びを実務に持ち帰ってもらい、その実践に対してフィードバックをかける。この循環をプロセスとして設計し、私自身が最後まで伴走することを前提にしました。
「わかる」で終わらせず、「できる」まで持っていく。さらに言えば「成果が出る」ところまで見届ける。伴走が入ることで初めて、行動変容は本物になると考えています。


今回のプログラムの全体像を教えてください


多胡氏:
一言でいうと、次期リーダーの育成です。
プログラムは大きく2つ。研修によるインプットと、実務でのアウトプットを組み合わせ、学んだことをそのまま現場で使う流れを作っています。
対象は管理職一歩手前の層。プロジェクトを回したり、周囲を巻き込んだりする役割を担う人たちです。この層は実務能力が高い一方で、視座や影響力の使い方に課題を抱えているケースが多い。
そこで、視座を引き上げる・スキルをインストールする・実務で使う
という3段階で設計しました。

 

<本施策の課題解決実践プログラム>



リーダー層が、自らの強みを土台に新たな視座を持ち、課題解決思考と周囲を動かす力を実践を通じて身につけ、次世代を担う人材へとステップアップするプログラム。 ※今回は立ち上げフェーズのため短期実施ですが、本来は6~9か月程度かけ、実務課題への取り組みや1on1、中間報告会などを通じて成果につなげるプログラムです。

 

研修と実務はどのように設計されたのでしょうか?


多胡氏:
大前提として、私たちは既製のパッケージ研修を持ち込むことはしません。今回も、越川さんたちとの議論の中で「本当の課題はどこにあるのか」を掘り下げるところから始めました。表面に見えている課題と、本質的な課題は違うことが多いんです。そこを見立ててから、コクヨさんの状況に合わせてゼロから設計しています。

その上で最初にやったのは「視座の再定義」です。自分の2階層上から物事を見ると、同じ課題でもまったく見え方が変わるんですよね。
続いて、構造的に考える力、定量的に説明する力、周囲を巻き込む力といったスキルを入れていきます。
ただし、ここで終わらせないのがポイントです。

必ず実務の中で使ってもらう。これが非常に重要なんです。
実務で使う中で「あ、こういうことか」と腹落ちする瞬間が生まれる。そこまで持っていく設計をしています。

 

<プログラム設計プロセス例> 


当社では、画一的なプログラムは提供しません。
まず現状を分析し、課題が明確であれば目標を設定し、不明確な場合は対話や分析を通じて本質的な課題を整理します。その後、目標達成に必要な要因を分析し、組織と一人ひとりに合わせたプログラムをゼロから設計。実践・伴走支援を行いながら進捗を可視化し、成果を検証した上で次の成長へとつなげます。
状況や課題、目指す姿に応じて内容を組み立てるため、納得感と再現性のある、オーダーメイドの支援を実現しています。

 

<実際の課題解決実践風景>



フォローアップや1on1はどのように行われましたか?


多胡氏:
今回のプログラムで特に意識したのは、「研修の外側をどう設計するか」でした。正直に言うと、研修の中でどれだけ良いことを言っても、現場に戻った瞬間に元の行動に戻ってしまうケースは非常に多いんです。
なので今回は、フォローアップをかなり意図的に設計しました。大きく3つあります。

1つ目は、外部との継続接点です。外部の人間が定期的に関わることで、良い意味での緊張感が生まれます。社内だとどうしても優先順位が下がってしまうことがありますが、「次に見られる」という状態があるだけで、行動の質が変わります。私自身、1on1では一人ひとりの仕事や悩みに本気で踏み込みます。遠慮して当たり障りのないことを言っても、人は変わりませんから。深く、丁寧に、向き合う。ここは絶対に手を抜かないと決めています。

2つ目は、アウトプット前提の設計です。単に学ぶのではなく、「日常の仕事に活かす」「以前と発言や行動を変える」という前提を置く。これによってインプットの質が変わり、実務との接続も強くなります。

そして3つ目が一番重要で、上司の巻き込みです。これは正直、やるかやらないかで成果が大きく変わります。本人だけが頑張っても、戻る環境が変わっていなければ、元に戻る確率が高い。
今回は上司の方々にも事前に説明をして、「任せること」「問いを投げること」「関わり方を変えること」をお願いしました。ここがうまく回ったことで、変化が生まれたと思っています。

私たちはこの伴走型のアプローチを「SUMIBI」と呼んでいます。炭火のように、まず一人ひとりの内側に火をつける。そしてその熱を、上司へ、周囲へ、組織へと伝播させていく。一過性の炎ではなく、じわじわと長く燃え続ける火を起こすイメージです。


実施前後で最も大きく変わったことは何ですか?


越川氏:
いくつかありますが、一番象徴的なのは「発言の変化」です。
これまでの発言は、良くも悪くも「自分の領域に閉じた正しさ」だったんですね。専門的には正しいのですが、それが意思決定にどう影響するかまでは踏み込めていなかった。

それが今回のプログラムを経て、「誰がどう判断するか」を踏まえた発言に変わってきました。
「自分の正しさ」ではなく「相手にとっての価値」で話すようになったのが大きな変化です。
一見すると小さな変化に見えるかもしれませんが、組織にとっては非常に大きな転換です。意思決定の質そのものが変わりますから。

 

行動面ではどのような変化が見られましたか?


越川氏:
行動でいうと、「越境」が起き始めたのが大きいですね。
もともと今回の対象者は、いわゆる“職人型”の人材が多かったんです。自分の領域には非常に強い一方で、その外にはあまり踏み出さない。それが、自分の担当外のテーマにも自然に関わるようになってきました。しかも、指示されたからではなく、「自分で必要だと思って動く」という形で出てきているのがすごいところです。
さらに言うと、周囲を巻き込む動きも出てきました。後輩に任せる、他部署と連携する、といった行動が増えてきています。

 

成果として、組織への影響はありましたか?


越川氏:
かなりありましたね。上司側からすると、「任せられる範囲が広がった」という感覚があると思います。

越川氏:
定量的な数値だけで成果を語るのは難しい部分もありますが、確実に言えるのは、組織の「回り方」そのものが変わってきたという点です。これまで見過ごされがちだった課題が早い段階で共有されるようになり、課題発見のスピードが上がりました。情報が集まるだけでなく、その情報をもとにした意思決定の質も明らかに変わってきています。部門間の連携もスムーズに進む場面が増え、組織全体の動きに一体感が生まれてきました。

象徴的だったのは、他の部門から「自分たちのところでも同じ取り組みをやりたい」という声が自然に上がってきたことです。トップダウンで展開したものではなく、現場から自発的に出てきた反応であり、その意味でも、組織に起きている変化の質をよく表していると感じています。


今回の取り組みはどのような企業にフィットすると思いますか?


越川氏:
フィットする企業には、いくつか共通する特徴があると感じています。まず挙げられるのは、個々の能力は高いものの、それが組織としての成果につながりきっていないケースです。いわゆる“職人型”の組織では、一人ひとりの専門性は高い一方で、横の連携や全体最適の視点が弱く、組織としての力を発揮しきれていないことが少なくありません。

また、「研修は実施しているものの、現場での変化が見えない」と感じている企業にも適していると思います。多くの場合、その背景には施策が単発で終わってしまっているという課題があります。研修が“点”として存在しているだけでは、行動変容にはつながりにくいのです。
今回の取り組みでは、視座の引き上げ、スキルの習得、実務での実践、そして上司の関与といった要素を切り離さず、一体のプロセスとして設計しています。これらが相互に作用することで、初めて組織としての変化が起きやすくなると考えています。

 

今後の組織づくりの展望を教えてください


越川氏:
ここは正直に言うと、まだ道半ばだと捉えています。今、組織の中で起きている変化は、あくまで「空気が変わった」段階に近いものです。よく例えるのですが、窓を開けて新しい空気を入れた状態で、確かにこれまでとは違う風が流れ始めている。ただし、窓を閉めてしまえば、また元の状態に戻ってしまう可能性もある。つまり、構造そのものが完全に変わったわけではないという認識です。

この状態から本当に組織として定着させていくには、やはり時間が必要です。3年、5年と継続していく中で「これが当たり前だよね」と言える状態に近づけていくことが重要ですし、10年単位で見たときに初めて、文化として根付いたと言えるのだと思います。

一度の施策で劇的に変わるものではなく、むしろ変化を維持し続けることのほうが難しい。だからこそ、短期的な成果だけで判断するのではなく、長い時間軸の中で粘り強く取り組みを続けていくことが、最終的な成果につながると考えています。


最後に、同じ課題を持つ企業へのメッセージをお願いします


越川氏:
やはり一番お伝えしたいのは、「人は変わる」という前提に立てるかどうかです。
いろいろな企業を見てきましたが、ここを信じていない組織は、どうしても施策が表面的になります。人はやる気になれば本当に変わりますし、想像以上の成果を出すこともあります。その“化ける瞬間”をどれだけ引き出せるか。
そこに向き合うことが、組織づくりの本質だと思っています。

多胡氏:
私からも一言だけ。人材育成は、それ自体が目的ではありません。事業の成果を出すため、そして企業が持続的に繁栄していくために必要だからやるものです。

そして、その先にあるのは、一人ひとりが楽しく、満足度高く、自分の仕事やマネジメントに向き合えている状態です。人に変化が生まれ、周りや組織に火が伝播していく瞬間に立ち会えることが、私たちの何よりの喜びです。越川さん、本日はありがとうございました。



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